約138億年前、宇宙は何もない状態から誕生しました。この「何もない」というのは、空間や時間すら存在しなかった状態です。
突然、ごく小さな「宇宙のタネ」が誕生しました。そして、そのタネは一瞬にして急激に膨張し、大爆発を起こしたのです。
この大爆発こそが、ビッグバンです。
膨張する宇宙
昔、天文学者たちは宇宙が静止しているものだと考えていました。つまり、宇宙は変わらずに、ただそこにあるだけだと。
しかし1929年、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが驚くべき発見をしました。彼はウィルソン山天文台の大きな望遠鏡を使い、遠くの銀河の光を分析しました。
その結果、遠くの銀河ほど、そこからやってくる光が赤っぽくなっていることがわかったのです。
ここで例え話をしましょう。救急車が近づいてくるとき、サイレンの音が高く聞こえ、遠ざかると低くなるのを感じたことがあるでしょう。これはドップラー効果と呼ばれる現象で、音源が近づくときに音波の振動数が増え、遠ざかるときは振動数が減って耳にとどくからです。
光にも同じことが起こります。銀河が遠ざかると、その光は振動数が減って赤っぽくなります。
このことから、遠くの銀河が私たちから離れていく、つまり宇宙が膨張しているという事実がわかったのです。
宇宙の始まりを考える: 時間を巻き戻すと…
宇宙が膨張し続けているのなら、過去にさかのぼると宇宙はどんどん小さくなるはずです。時間を巻き戻すと、宇宙は小さな一点にまで縮まります。だとすると宇宙に始まりがあったはずです。
1931年、ベルギーの若手天文学者ジョルジュ・ルメートルがこの宇宙の始まりについての新しい説を唱えました。
彼は、宇宙は小さな「原初の原子」から始まり、そこから爆発的に膨張したと考えました。これが現在のビッグバン理論の基礎となったのです。
火の玉宇宙とビッグバンの証拠
ビッグバン理論をさらに発展させたのが、理論物理学者のジョージ・ガモフでした。彼は宇宙が始まった直後の高温の状態、いわば「火の玉宇宙」の存在を提唱しました。
そして、ビッグバンによって放出された熱が、宇宙全体に今も残っているはずだと予想したのです。この「火の玉宇宙」論は多くの批判を浴びました。
ところが、思いがけないことからこの理論が実証されたのです。1965年、2人の研究者が人工衛星との通信を試みていた際、宇宙のあらゆる方向から微弱なマイクロ波を捉えました。この電波の正体がわからず悩んでいた彼らは、ガモフの理論を知り、これがビッグバンの名残だと気づきました。
この発見がビッグバン理論の確固たる証拠となり、現在ではビッグバン理論は宇宙の進化を説明する正統な理論として広く受け入れられています。