一つの惑星として地球を観測すると地球環境が見えてきます。
先日、水星探査機「みお」の目的地到着が予定よりも遅れるという発表がありました。金星の人工衛星となって大気を観測する日本の探査機や、火星の自走車となって表面を調査する海外の探査機など、太陽系のどこかしらで精密器械が毎日活動しているのが当たり前になっています。
でも、かつては木星や土星などの惑星の様子は望遠鏡を通して捉えるほかありませんでした。近寄ってつぶさに見たり、降りてそこにあるものを調べたりするなど、夢のまた夢と思われていました。それがロケットの登場と人工衛星の実現で夢ではなくなりました。
全体像を描く
宇宙に飛び出すことができるようになると、まず地球を回ってみました。それからすぐに、見たことのない世界に目を向けて、月はもちろんのこと金星や火星に探査機を送り込みました。なにしろ見たことがないのですから、知っている世界よりもそちらを見たいと思うのが人情というものでしょう。本当は姿を捉えて様子を見ない限り次の一手を打てないので、手始めに写真を撮ったのですが。
様子がわかると、あの模様はどうしてできたのだろうか、予想もしなかった様子が見えているけれど何が起こっているのだろうかなどという疑問が湧いてきます。そこで、温度計や圧力計、重力計、放射線計測機などさまざまな機器を積んだ探査機が向かいました。そして、火星をはじめとする惑星の周りを回って、広い範囲を見渡すことができる上空からの観測を長期間行い、まずは全体像をつかんだのです。
そうして、可能な場合は探査機を表面に下ろしてその場所の詳しい観測を行いました。着陸点での観測はそれだけではその場所特有の情報に留まります。けれども全体像と結びつけると全体の中の部分という位置づけができます。そして全体像の中に似たようなところがあれば、その場所では同じようなことが起きていると推定できます。こうして、着陸点だけ、全体像だけからでは引き出すことのできないさまざまな情報を手にすることができます。
各地点で起こることは全体からの影響を受けています。全体は各地点で起こる出来事が互いに影響し合って作り上げられます。全ての地点での詳しい観測は不可能ですが、いくつかの地点での観測と上空からの観測とを組み合わせると、いろいろな場所で起こる出来事を全体像から信頼性をもって推測できるようになるというわけです。
宇宙的視点で捉えた地球
さて、地球ではさまざまな場所で気象観測や資源探査などが行われ、点と点を結んで天気図や地質図などの全体像を描いていました。この状況で人工衛星を使って地球を探査すると、他の惑星と同じようにこれまでにない精度で地球の全体像を描くことができるようになりました。
こうして地球を宇宙視点で捉え、全体的な気温や海水温、二酸化炭素量などの分布や経年変化がわかるようになったのです。ここに地球環境を考える科学的な土台が整ったのでした。
こうしてみると、地球を他の惑星と同じように捉えることができるようになって初めて、人間の意識の中で地球は惑星の仲間入りをしたのかもしれませんね。
※画像: JAXAとESAが共同で進めている水星探査計画「BepiColombo(ベピコロンボ)」が水星に近づくイメージ (c) spacecraft: ESA/ATG medialab; Mercury: NASA/JPL