
2025年3月、NASAは「EZIE(Electrojet Zeeman Imaging Explorer)」ミッションの打ち上げを予定しています。
EZIEミッションの目的は、オーロラが発生する際に生じる「オーロラジェット電流」を詳しく調べることで、最終的には、宇宙天気予報の精度を高めることを目指しています。
宇宙天気とは
では、「宇宙天気」とは何でしょうか? 宇宙で雨が降るのでしょうか? いいえ、宇宙には雨は降りません。
地球と太陽の間には、「太陽風」と呼ばれる「風」が吹いています。
太陽風とは、太陽から放出される電気を帯びた粒子の流れのことです。これは、太陽の活動によって強まったり弱まったりします。太陽風が地球の周りの環境に与える影響を「宇宙天気」と呼んでいるのです。
例えば、太陽で爆発的な現象が起こり、高密度の太陽風が地球に向かって放出されることがあります。これを「太陽面爆発」や「コロナ質量放出」と言います。この影響で、人工衛星の電子機器が誤作動を起こしたり、地上との通信が乱れたりすることがあります。
オーロラジェット電流とは
次に、オーロラジェット電流とは何でしょうか?
地球は、大きな磁石のようなものだと考えてみてください。その周りには「磁場」と呼ばれる見えない力の領域が広がっています。
オーロラジェット電流が生まれる仕組みには、この地球の磁場が深く関係しているのです。
磁石には「磁力線」と呼ばれる見えない線があり、地球の場合は南極から北極へと流れています。
理科の実験で、棒磁石の上に紙を置いて砂鉄をまいたことはありますか? 砂鉄が磁石の周りにきれいな模様を作りますよね。地球の磁場もそれと同じような形になっています。
電気を帯びた粒子は、この磁力線に沿って動く性質があります。宇宙空間を吹き抜ける太陽風の粒子も、地球の磁力に影響され、特に北極や南極に集まりやすくなります。そしてこれらの粒子が、地球の上空の大気に衝突すると、美しいオーロラが発生するのです。
オーロラが輝く時には、上空には大量の電気を帯びた粒子が存在し、それによって強い電流が発生します。これが「オーロラジェット電流」です。この電流は、地球の磁場に影響を与え、時には停電などのトラブルを引き起こすこともあります。
NASAのEZIEミッション
NASAは、このオーロラジェット電流を詳しく調べるために、EZIEミッションを計画しました。
このミッションでは、キャリーケースほどの大きさの小型人工衛星3機を運用します。これらの衛星は、地球の上空約550kmを周回しながら、オーロラジェット電流を観測する予定です。
オーロラジェット電流は、地上約100kmの高さにある「電離層」と呼ばれる領域を流れています。EZIEの3つの衛星は、北極や南極の上空を通りながら、この電流の構造や変化を詳細に測定します。
それぞれの衛星は、同じ地域を2分から10分間隔で飛行し、オーロラジェット電流がどのように変化するのかを追跡します。こうして得られたデータをもとに、NASAは宇宙天気の影響をより正確に予測できるようにし、最終的には地球上の生活への影響を減らすことを目指しています。
EZIZミッションは、宇宙天気研究の新たな一歩となります。今後宇宙天気予報がさらに進化すれば、私たちの暮らしの安全性も向上することが期待されています。
※写真: EZIEのイメージ (c) NASA/Johns Hopkins APL