春の1等星の和名と由来を詳しく解説|レグルス・スピカ・アルクトゥールスの日本名は?

アルクトゥールス

華やかだった冬の星々のあとに訪れる春の夜空の見どころと言えば、やはり1等星です。

春の夜空には3つの1等星がありますね。獅子座のレグルスおとめ座のスピカうしかい座のアルクトゥールスです。

この3つの星には、それぞれ特徴的な和名(日本名)が付いています。今回は、その和名について解説しましょう。

レグルス――樋掛け星(といかけぼし)

レグルスは、日本では「樋掛け星(といかけぼし)」と呼ばれてきました。

春先、夜空にこの星が見える頃は、田に水を引く準備を始める時期にあたります。水田に水を導くためには、樋を掛け、水路を整えなければなりません

レグルスは、その作業の目安となる星でした。「この星が見える時期に、その仕事をする」という、生活のリズムが名前になったのです。

すなわち、樋掛け星が見える頃には、田んぼの準備をするのです。夜空は暦であり、農作業の合図でもありました。

樋掛け星という呼び名には、そうした農作業に関係する実用的な感覚が端的に表れているのですね。

なお、獅子座は天の大鎌とも呼ばれますが、クエスチョンマークを裏返したように見えます。そしてレグルスは、そのクエスチョンマークの点に位置します。

それ故に「といかけ星」というわけではありません。できすぎの話ではありますが、偶然です。

スピカ――真珠星(しんじゅぼし)

スピカの和名は「真珠星」です。

春の夜空で白く澄んだ光を放つスピカは、確かに真珠を連想させます。おぼろに霞む春の夜空には、真珠星の白く清らかな光が似合うようです。

真珠星は命名者がはっきりしている珍しい1等星でもあります。

名付け親は、天文民俗学者の野尻抱影(のじり ほうえい)氏で、日本各地の星の呼び名を調査・整理する中で広めたものと言われています。

とても美しい和名を持つ星ですね。

アルクトゥールス――麦星(むぎぼし)・五月雨星(さみだれぼし)

スピカの近くでオレンジ色に輝く星がアルクトゥールスです。

アルクトゥールスには、複数の和名があります。「麦星」「麦刈り星(むぎかりぼし)」「麦熟れ星(むぎうれぼし)」、そして「五月雨星」です。

この星が宵の空で目立つ頃、地上では麦が熟し、刈り入れの時期を迎えます。また同時に、梅雨、すなわち五月雨の季節でもあります。

アルクトゥールスの和名は、地上の季節感を空の星の名前に反映させたものです。

七十二候で言う「麦秋」は、まさにこの時期を指します。春の終わりは、星の動きと農の営みが一致する節目でもあったのです。

なお、オレンジのアルクトゥールスと白いスピカを2つ合わせて、「春の夫婦星」と呼ぶこともあります。

▼和名についてはこちらも▼

3つの星を結ぶもの

レグルス、スピカ、アルクトゥールスは、春の夜空に輝く3つの1等星です。これらは「春の大三角」とも呼ばれています。

スピカとアルクトゥールスは比較的近接して見られますが、レグルスはかなり離れた位置にある星です。そのため三角形は細長い二等辺三角形になります。

この春の大三角にはもうひとつ、別の考え方があります。レグルスではなく、おなじく獅子座の2等星のデネボラを用いるのです。

デネボラは獅子座の尻尾の先で輝く星であり、レグルスに比べて他の2つの星の近くに位置します。

そのためスピカ、アルクトゥールス、デネボラで、ほぼ正三角形に見えるのです。

どちらの考え方も間違ってはいません。ただ春のぼんやりした夜空の中では、デネボラよりもレグルスが見つけやすいですよね。

今回は、春の夜空に輝く3つの1等星の和名を見てきました。

これらは、暦であり、農作業の合図であり、そして気持ちを豊かにする対象でもあったのです。

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