秋は空が澄み渡り、星々が清々しく輝く夜も多くなります。一等星がフォーマルハウトひとつだけの秋の空はどこか寂しげではありますが、2024年の秋は、みずがめ座にも一等星が現れて彩りを添えています。それは土星。
土星と言えば環、環と言えば土星というくらい、土星はその環で知られています。ところが、その環がなくなるときがあります。正確には、なくなるのではなく見えなくなるのですが。
土星の環とは?
そもそも土星の環とはどんなものなのでしょうか。まずは大きさから見てみましょう。
土星を直径2cmの1円玉の大きさに縮めると、目で見てわかる環の直径は約5cm、土星本体の2.5倍になります。このとき環の厚みは10万分の1cmほどで、インフルエンザウィルスの大きさと同程度になります。環は光をよく跳ね返すので明るく見えますが、これほど薄いと真横からは見えません。
ではどうして明るく見えるのでしょうか。
それは環のほとんどが水の氷でできているからです。それも一枚の板になっているのではなく無数の粒が密集して土星の周りを回り、環になっているのです。厚みはないけれども、氷の粒が霜柱のように太陽光をきらきら反射して明るく見えるというわけです。この環があるからこそ土星は夜空に明るく輝くのです。
実際の大きさは、土星本体が直径約12万kmで地球の9.5倍ほど、環の直径は約28万kmで、土星を地球の位置に置くと月までの距離の半分近くまで環が広がります。氷の粒はミリメートルからメートルの大きさで、環の厚みは一番厚いところで1km程度、薄いところでは20mほどです。氷の密集度は高く、環の向こう側はほとんど見えません。
土星の環が消える理由
土星は約30年かけて、太陽の周りの軌道を一周します。地球がそうであるように自転軸が傾いていて、太陽から見るとその姿勢は頭を下げたりお尻を向けたりするような変化をします。
そしておよそ15年に1回、太陽に真横を向ける位置に来ます。このとき環には光が当たりません。つまり環の輝きが失われます。
このタイミングで地球から土星を見ると、環のない土星になります。また、環に光が当たっていても土星が地球に真横を向ける位置にいると、やはり環のない土星になります。地球からのこの見え方を含めると、15年ごとに2回、環のない土星になる時期がやって来ます。
2025年は環のない土星に
実際に環のない土星が2回見えるかどうかはタイミングによります。昼間に土星が上がっていると見えないからです。直近では、2025年5月上旬と11月下旬に環のない土星を見ることができます。
土星以外に、木星、天王星、海王星にも環があります。けれどもどれも細く、暗くて地上の望遠鏡で捉えるのは困難です。このように、惑星には環があっても見えないのが普通です。環のない土星は土星本体が普通の惑星であることを教えてくれると同時に、土星らしさとは何かがよくわかる機会でもあると言えるでしょう。