
星空を見上げたとき、星座や物語に思いを馳せる人もいれば、宇宙の不思議に想像をたくましくする人もいることでしょう。天文学が扱うのは後者です。星座や物語の探究は文化の研究です。
星はどうして光るのだろう、銀河にはどんな特徴があって、どうしてそうなっているのだろう、宇宙はどこまで続いているのだろうなどの疑問を物理学の手法を使って探究するのが天文学者です。
物理学の知識が必要
宇宙を探る手がかりは電磁波です。電磁波は目に見える光(可視光線)をはじめとする光の仲間で、電波や赤外線、紫外線、X線などがあります。この他の手がかりには重力波や宇宙線などがありますが、これまでもこれからも、圧倒的に使われる手がかりは電磁波の他にありません。
何かが起こると光を放つことがあります。光の放ち方は出来事によって決まっているので、やってきた光を分析すれば何が起こっているか絞り込めます。光を出さない現象は捉えるのが難しいのですが、光を出す現象、つまり「見える」現象については、光を捉えたり分析したりできれば謎解きができます。それには物理学の知識と方法に通じていることが必要です。
光の強さや色味を測って数値にすることを観測と言います。見ることも大切ですが重要なのは測ることで、見るだけの「観察」は決して「観測」とは言いません。
観測をして宇宙の不思議を探究するためには訓練が必要です。
天文学の分野は多種多様
訓練は大学と大学院で受けます。大学は天文学科、物理学科が望ましいのですが、その他の理学系・工学系の学科でも構いません。なぜなら天文学で扱う事柄は多種多様だからです。
地球外生命を探るのであれば、生物や化学の知見が必要です。電波観測を行うのであれば、受信機その他の回路を設計することもありますから、電気電子工学の知識が必要です。理論計算にコンピュータシミュレーションを行うこともあり、これにはプログラミングなどのスキルが必要です。
何をするにも物理学が基本中の基本ですが、興味と関心次第で理工系のどの分野からでも参入できるのが宇宙の研究です。
天文学者を目指すのであれば、高校で学習できる科目で言えば物理、化学は必須、生物、地学は開講されていたら学んでおくとよいでしょう。数学と英語を身につけることは言うまでもありません。数学は物理の言語としても複数の視点からの論理的な思考を訓練する題材としても欠かせません。英語は科学の公用語です。
その上で、できれば天文学者のいる大学で学ぶとよいでしょう。天文学者は天文学科だけでなく、物理学科や教育系の学科、その他の理工系の学科にいます。インターネットを活用して天文学者がいる大学を調べてみるとあちらこちらに見つかります。
この他に、公開天文台などで実地に観測手法や論文の書き方などを身につける方法もありますが、それは狭き道だと思った方がよいでしょう。