
「月」という言葉は私達の日常において2つの意味で用いられます。
ひとつは天体すなわち地球の衛星である「月」、もうひとつは12月とか1月など暦で使われる「月」です。
これらはどうして同じ呼び方なのでしょう?
天文学的視点を交えて、分かりやすく解説します。
月の満ち欠けが暦の基準
衛星の月は満ち欠けをします。これは月が地球の周りを公転しているために見られる現象で、公転周期はおよそ29.5日すなわち約1カ月です。
新月から次の新月までがひとつの周期で、延々と繰り返されています。この周期を「ひと月」としました。つまり暦の1カ月は月の満ち欠けのことです。
ところで1日は日の出から次の日の出までで、こちらは地球の自転によって起こります。さらに1年は地球の公転によるものです。
1日 地球の自転
1月 月の公転
1年 地球の公転
この3つが暦の基準です。
1日は地球から見ると太陽の動きに見えるため「日」と呼ばれます。
ちなみに月の自転周期は公転周期と同じなので、月はいつも同じ面を地球に向けています。
クリスマス・お正月と太陽・月
ところで、夜の時間が最も長くなるころは、クリスマスやお正月のお祝いの時期です。偶然のように見えますが、実はどちらも太陽と月の動きに深く結びついています。
クリスマスと冬至は太陽が生まれ変わる日
キリスト誕生の物語に登場する「ベツレヘムの星」は、東方の三博士を導きました。もっともキリスト誕生の年は紀元前4年頃で定かではありません。同様に誕生日も定かではないのです。
ではなぜ12月25日がクリスマスなのでしょう?
それは冬至のお祝いと合体したと考えてよいでしょう。冬至は、太陽が1年のうちで最も南に位置し、昼が最も短くなる日です。視点を変えれば、この日以降は昼が長くなるため、太陽が生まれ変わるとみなせます。
暗闇が極まったあと、少しずつ昼が長くなります。その復活を祝う祭りがキリスト教の「クリスマス」と重なりました。太陽の再生の喜びを祝う日ですから、キリスト教としては最も重要な日です。
クリスマスは天体の動きと密接な関係を持っていたのですね。
現代のお正月は西洋の暦が基準
現代の新年は、太陽が再生する冬至やクリスマスに近い時期です。
太陽暦(グレゴリオ暦)が採用されていますが、これはヨーロッパが起源です。冬至に近い時期に新年を設定する伝統が続いています。
つまり、現代のお正月も太陽の1年の動き(厳密には地球の公転)を背景に持っているのです。
旧正月は季節感あふれる
お正月には「新春」「初春」「迎春」などの言葉を使いますが、春と言うには違和感があります。一方で日本でも長く使われてきた旧暦は、季節感に対応しています。旧暦の正月(春節)は春の気配を感じられる時期ですよね。
なぜなら暦を作る際に、春分・夏至・秋分・冬至などを基準にするため、季節感が取り込めるのです。
旧暦と季節感
旧暦は太陰太陽暦とも呼ばれ、太陽と月の動きを考えて作られます。
ただし12カ月の合計が354日で、太陽を基準とする1年の365日より短くなります。その調整のために数年に一度「閏月」を入れるのです。
閏月の入れ方にはルールがあります。例えば春分・夏至・秋分・冬至などが閏月に入らないようにするのです。つまり冬至は必ず旧暦11月に入るよう調整され、同様に春分は2月、夏至は5月、秋分は8月に入るようにしてあります。
季節は太陽の動き(実際は地球の公転)によるものですので、そこに月の動きも合わせて暦は作られているのです。
旧暦の正月(春節)の時期
旧暦の月(month)は衛星の月(moon)を基準にしていて、新月が1日(ついたち)です。そのため旧暦の1月1日は立春あたりの日ですが、必ずしも一致はしません。
旧暦は月(moon)を基準にした新月などと太陽を基準とした冬至や春分などを両方取り入れているため、太陰太陽暦と呼ばれます。自然に寄り添った暦で、歳時記の基準となります。
中国やアジアの国々が、旧正月すなわち春節のお祝いを大事にしているのは生活実感があるからです。春節は文字通り「春の始まり」であり、太陽と月の動きが生む節目なのですね。
▼月の影響については▼
クリスマスも旧正月も天体の節目
クリスマスは冬至に結びついた祝祭であり、旧正月(春節)は太陽と月の動きが作り出す「春の始まり」です。
現代人にとって暦は便利な日程表ですが、実は太陽と月という2つの天体が織りなす周期が、その根底に息づいています。天体のリズムを知ることで、クリスマスやお正月などの行事が宇宙の動きと深く結びついていることが分かりますね。







