
冬の夜は、空気がきゅっと澄みます。手袋越しに温かいボトルを握って空を見上げると、南の空にオリオンの“三つ星”。その上に赤いベテルギウス、左下にまぶしいシリウス、右上にやさしいプロキオン。三つを結べば“冬の大三角”です。東京の空でも、ちょっとしたコツでしっかり見つかります。
今回のハイライト
・冬の大三角を肉眼でキャッチ
・M42(オリオン大星雲)とすばる(プレアデス)は双眼鏡でぐっと美しく
・20:00~23:30が見やすい帯。月が出ていたら月を背中側に
1. いつ・どこを狙う?
1~2月は透明度が高く、星がくっきり。ねらい目は20時~23時半。場所は街灯を背にできて空が広いところが楽です(河川敷、海辺、大きな公園の広場など)。
着いたら20~30分だけスマホを見ないで暗さに目を慣らしましょう。月のある夜は、体の向きを変えて月を背に。建物や木で月光を遮るだけでも見え方が変わります。
時間帯と方角の目安
・20:00: オリオンは南寄りで見やすい
・21:00~23:30: “黄金帯”。すばるは西~南西の高い空へ
・24:00以降: 全体が少しずつ西へ
2. 地図なしでたどるオリオン
導線まずはオリオンの「三つ星」を見つけます。三つ星の上にベテルギウス(赤っぽい星)。そこから左下へ目を滑らせるとシリウス(夜空で最も明るい恒星)。ベテルギウスに戻って左上へ行けばプロキオン。この三つで冬の大三角が完成。ここまで肉眼で行けたら、今日はもう半分成功です。
3. 双眼鏡が「点」を「景色」に変える
おすすめの双眼鏡は、8×42か10×50。手持ちでもブレにくく、都市の明るさの中でも集光力の恩恵を感じられます。リクライニングできる折りたたみチェアがあると首も楽。肘を支えるとさらに安定します。
まず狙うならこの順番
1.M42(オリオン大星雲):三つ星の少し下、縦並びの中央付近。羽根のような淡い雲がふわっと広がります。
2.すばる(プレアデス星団):米粒を散らしたような星の集まり。肉眼の“ぼんやり”が、双眼鏡で粒立ちに変わります。
スバルは、オリオン座の右隣にある星座・おうし座にあるため、こちらも三つ星を起点にすると見つけられます。三つ星から右上のほうに視線を移していくとオレンジ色の一等星・アルデバランがあり、そこからさらに右上に視線を移した位置にあります。
3.色の見比べ:ベテルギウスの赤と、リゲル/三つ星の青白。色の差がわかると、冬空が一気に立体的に。
4.迷ったら「オリオン -> M42 -> すばる -> 色比べ」。必ず「見えた感」が残ります。
4. 見え方を上げる小ワザ
雲が多い夜でも、天頂が抜ける瞬間は来ます。30分はのんびり粘るのがコツ。風が強ければ風下に建物や林がある場所へ移動。地面はアスファルトより芝や土が目の疲れに優しいです。これだけで体感がかなり変わります。
5. 写真は「うまく撮る」より「うまく残す」
スマホ:三脚固定 -> 夜景/長秒露出モード -> 広角で空を大きく。ピントは遠景固定。月や街明かりは建物で遮光。
カメラ:目安は14-24mm/F2.8前後/ISO1600-3200/10-20秒。RAWで撮って、家でコントラストと色温度を少し整えるだけで、肉眼の印象に近づきます。
うまく写らない夜は、双眼鏡とブランケット、湯気のマグを入れた“情景写真”でも、その夜らしさがちゃんと残ります。
6. 観察ノートは「一行でOK」
いつ/どこ/何がどれくらい見えたかを一行メモ。
例:「1/20 21:10 葛西臨海公園/M42の羽根が左右に/すばるは10個以上粒で」
次に同じ場所へ行ったとき、空の透明度や月明かりの違いが比べやすくなります。SNSに載せるなら時間帯・方角・コンディションを一言添えると、読んだ人の役に立ちます。
7. 防寒とマナーは「最初の装備」
・防寒最優先:ダウン、帽子、手袋、厚手の靴下+靴、貼るカイロ(腰・お腹・つま先)、ひざ掛け
・赤色ライトで足元だけ照らす(白色は暗順応がリセット)
・安全第一:立入禁止や私有地は避け、深夜は静かに
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まとめ:寒い夜こそ、星が近い
肉眼で冬の大三角をつかみ、双眼鏡でM42とすばるを“粒と雲”に変える。これだけで、冬の夜は確かな手応えをくれます。温かい飲み物をひと口、深呼吸をひとつ。見上げれば、今夜の空にちゃんと冬がいます。次の夜は、今日の一行メモを道しるべに、もう一歩だけ深い冬空へ。







