
地球以外にも、生命の存在する天体があるのか?
そんな古くて新しい問いの答えに、人類はまた一歩近づいたかも知れません。
2025年4月、NASAの最新宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ」によって、とある系外惑星の大気に、生命活動に関わる物質が見つかったのです。
120光年先の、気になる星
注目の舞台は、「K2-18b(ケーツー・エイティーンビー)」という惑星。地球からおよそ124光年離れた、しし座の方向にあります。
この惑星が最初に発見されたのは2015年。NASAのケプラー宇宙望遠鏡によるK2ミッションの成果でした。K2-18bは主星の前を通過するときに、星の明るさがわずかに暗くなる現象‐‐「トランジット(通過)」を観測することで、その存在が確認されました。
K2-18bは、赤色矮星「K2-18」のまわりを約33日かけて公転しており、その距離はちょうどいい温度の領域‐‐いわゆる「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」にあります。
地球に似ている?でもちょっと違う?
K2-18bは、地球の約2.6倍の半径があり、重さはおよそ8.6倍です。地球と海王星の中間のサイズを持つタイプの惑星であり、「サブネプチューン」と呼ばれています。
表面温度も(−72度~47度)と幅があるものの、ある条件下では液体の水が存在できる温度域におさまると見られています。
さらに注目すべきは、その大気の成分です。主に水素で構成されており、2019年のハッブル宇宙望遠鏡による観測では、なんと水蒸気の存在が示されました。
広大な海が広がる可能性もあり、科学者の間では「ハイセアン惑星」と呼ばれるタイプの有力候補とされています。ハイセアン惑星とは、水素が豊富な分厚い大気を持ち、その下に液体の水でできた海洋が広がっている惑星のことです。
「生命のサイン」が、大気から?
そして2025年にはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で、K2-18bの大気中に「ジメチルスルフィド(DMS)」や「ジメチルジスルフィド(DMDS)」といった化合物が検出されました。これらは、地球では主に海洋プランクトンなどの生物活動によって生成される物質です。
とくにDMSは、潮の香りのもとになる成分としても知られ、生命の存在を示す「バイオシグネチャー(生命兆候)」の一つです。驚くべきことに、このDMSの量が、地球上の数千倍にも達していると見られます。
ただし「生命の証拠」とはまだ言い切れない
もちろん、これは決定的な証拠ではありません。今のところ、DMSなどの発生が生物以外の何らかの化学反応による可能性も否定できず、科学者たちは慎重な姿勢を保っています。
それでも、K2-18bにおけるDMS/DMDSの検出は、これまでの発見の中でも、太陽系外での生物活動の可能性を強く示唆するもののひとつと言えるでしょう。
この発見は、「生命が存在しうる環境」の定義を大きく広げる可能性があります。
写真: K2-18 bのイメージ図。 (c) NASA, CSA, ESA, J. Olmsted (STScI), Science: N. Madhusudhan (Cambridge University)